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地球温暖化防止こそが焦眉の問題(2)
〜山が荒れ、保水力低下も一因


山が荒れ、保水力低下も一因

 このところ毎年のように日本各地で起きている豪雨による大災害は地球温暖化と無関係ではない。温暖化による海面の温度上昇が水蒸気をたっぷりと含んだ高気圧を発生させている。
 南の高気圧と北の低気圧がぶつかり均衡を保つと前線が生まれ、前線の南側に大量の雨をもたらすというのは指摘されている通りだが、年々、高・低気圧の力が均衡し、前線の停滞が長引く傾向にある。
 特に今年は梅雨前線の停滞が異常に長い。気象関係者によれば豪雨災害は日本では西半分に多いらしい。範囲をもう少し広げると、中国南部の三峡ダムの決壊の恐れも言われており、温暖化防止は人類の生存をかけた闘いと言っても過言ではないだろう。

 世界的規模で言えば化石燃料の使用過多によるCO2の増加、アマゾン他の熱帯雨林や森林伐採を伴う乱開発によるCO2吸収量の減少、急激な都市化による都市の熱放射(ヒートアイランド現象を含む)、地上を走り回る車と空を飛び回るジェット機、さらに最近は牛が出すゲップに含まれるCO2までが問題にされている。
 しかし、これらの削減による温暖化防止策には重要な観点がいくつか抜けている。それについては後述する。

 一方、国内に限って言えば別の側面も見える。戦後の住宅ブームで林業が儲かる産業として脚光を浴び、盛んに植林もされたが、植林されたのは杉ばかり。それが後に安い輸入材が入ってくるようになり、競争力に敗れた国内林業が廃れていったのも知られている通りだ。
 木材の販売額が山からの搬出費用を上回れば伐採はしても搬出せず、その場に倒木として放置される。そこに持ってきて林業従事者の高齢化が重なればなおのことだ。
 かくして森林は荒れ、山の保水力は弱まり、大雨になれば倒木が凶器となって山肌を滑り落ち、道路や家屋を襲い、河の流れを堰き止め、被害を大きくしていったのは今回九州各地を襲った大水害でも目にした光景である。

 短期的には治水事業等で少しでも被害を減らさなければならないが、それらは飽くまでも対処方法で、どこかを治せば別のどこかで被害が起きる、もぐら叩きのようなものだ。もう少し長期的な視野で当たる必要がある。
 地球温暖化防止への取り組みは待ったなしだ。選挙対策などではなく、よほど真剣に取り組まなければ、冗談ではなく人類は滅びるだろう。

 温暖化防止が言われだしたのは何もこの10年や20年ではない。その前から指摘され世界規模で取り組んできているが、各国の利害が複雑に絡み合い、なかなか全世界が一致して取り組むというところには来ていない。
 しかし、ここまで自然災害が世界各地を襲い出すと、もうそんなことは言っていられないだろうし、もしかすると今回のCOVID-19の世界的大流行が1つの契機になるかもしれない。
                                               (3)に続く

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