少し前、読者から次のようなメールが届いていたので、今回はこれをきっかけに製造業が陥りやすいウイークポイント、中小企業が力を入れるべき点について考えてみたい。
> ・本当によい物を作っていればいずれ認められ、隠れた口コミルートで流れる。
> ・でも、取上げられたのは結果論と言っては言い過ぎでしょうが> ・そこまで来るのに多くの挫折した人もいるでしょう。
> ・成功例が良く雑誌などで紹介されてます
> ・本当に味が分ってくれて評判が立つのか、、、。
> ・宣伝効果なのでしょうか
いまどき「よいモノを作れば売れる」と考えている企業は存在しないだろうと言われそうだが、こうした企業は結構多い。特に中小企業には。
大企業でも状況は似たようなもので、かつて「技術の○○」といわれた企業がいまは見る影もないのを見れば明らかだろう。
それも過去の話ではない。
例えばパイオニア。3月にプラズマパネルの自社生産から撤退すると発表したが、かつてはプラズマパネル業界をリードしたほどの技術力を持った企業だった。
ところが、生産から組み立てまでの自社一環体制をやめ、今後は松下電器産業(現パナソニック)からプラズマパネルを調達することにしたのである。
なぜ、そうなったのか。
同社の須藤民彦社長は記者会見で「我々の持っている技術力、資金力、販売力と世の中のスピードがうまく合わなかった」と答えている。
世の中の変化が激しく、スピード感を持った経営ができなかったということだ。
果たしてそれだけか。
「品質では松下より上」「よいモノを作れば売れる」といった自負も判断を鈍らせたのではないか。
朝日新聞はそう論評した。
同じ記者会見の席で、出席者から「DVDレコーダやプラズマなど、世界初の製品を手掛けながら、市場が立ち上がると収益性を落としてしまう。その理由は何か」との問いには、「何が何でも一番になるという気構え、チャレンジできる資金も含め、そうした意識が薄弱だった。なんでもチャレンジすればいいというものではないが、少なくとも1、2位の座を譲らないような事業をやらないと市場で生き残るのは難しい」と答えている。
「よいモノを作っているのだから、そのうち売れてくる」と考え、「なにがなんでも売る」という強い執念がなかったということだ。
こうした傾向は技術を売り物にした企業にほど強く見られるが、実は技術力を標榜することでマーケティングや販売力その他の弱さから逃げているのではないかという気がしている。
さて「本当によい物を作っていればいずれ認められ、隠れた口コミルートで流れる」のだろうか。
答えはイエスともノーともいえる。
「いずれ」は認められるのだろう(かもしれない)が、「いずれ」の時期が問題で、もしかすると数年後かもしれないし、50年後、100年後かもしれない。
仮に運良く認められても、その時には市場がなくなっていれば、博物館的価値だけで終わってしまう。
誤解がないように言っておくが、「よいモノを作れば売れる」わけではないが、逆は必ずしも真ならずで、「売れるものがよいモノ」とも限らない。ましてや「いい加減なモノが売れる」のではない。
まず「よいもの」でなければならない。
これが大前提だ。
ここを勘違いしないようにして欲しい。
問題なのは「よいモノ」という場合の「よい」とは何かである。
品質なのか。
もちろん品質が一番だろう。
しかし、それだけか。
デザインは? 機能性は?
材質もいいし、きっちりと丁寧に作られている。しかし重かったり、無骨だったり、使い勝手がいまひとつの商品を人は「よいモノ」と言うだろうか。
答えはノーだろう。
つまり「よいモノ」とはこれらすべての要素を満足させなければならないのだ。
では、これらすべてが揃っていれば売れるのか。
(続く)
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