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 ビジネスは最初と最後が肝心(1)

 ビジネスはもちろんだが、ほとんどのことは最初と最後ですべてが決まる。
例えば男女の出会いは最初ですべてが決まる。
第1印象がよければ次の展開が期待できるが、第1印象が悪ければ次の約束はできないから、それ以上の発展は望めない。

 ビジネスの場合は名刺交換をする瞬間で勝負が決まる。
この数秒間を疎かにし、いい加減な態度で名刺を差し出す人はバカだ。
その時の印象が悪ければ、相手は二度と会おうとはしないだろう。
それが分かっているから名刺のデザインも工夫する。
何の変哲もない名刺では相手に覚えられないし、後々の印象にも残らないからだ。

 これがサービス業ともなればなおのことだろう。
最初の印象が悪ければ客は二度とその店には行かない。

 ところが「終わりよければすべてよし」という言葉があるように、最初の印象は悪くても最後がよければすべてがよかったことになる。
客は満足して帰るどころか、フアンになって口コミなどで宣伝までしてくれることになる。
この最たるものがクレーム処理だ。

 ビジネスに失敗はつきもの。
失敗を恐れてはいけない。
失敗を恐れるのではなく、失敗してもそれをいかに取り戻すかということだ。
それさえきちんとできれば、客は満足して帰る。
クレームの処理の仕方で客は敵にも味方にもなるのだ。

 クレーム処理の原則は「即座に」「迅速に」「誠意を持って」することだ。
時間がかかれば2時クレームまで派生する。
ところが、サービス業などでもこのことが案外分かってないところが多い。

 そこで以下に実例を2つ紹介してみたい。
1つは知人が体験した話。
 福岡市早良区に料理と展望風呂を売り物にしたSの郷というのがある。親会社は明太子の製造販売会社だ。
 夫婦でSの郷に1泊した時のこと。料理には大満足で、その上、宿泊料もリーズナブルだったので、2人とも大いに満足して翌朝チェックアウト。
ホテルを出て裏手の駐車場に行く途中、すぐ近くに滝があると書いてあったので、駐車場の管理人らしき男性に滝までの距離を尋ねたところ、いきなり「ここに車を駐めてもらっては困る。昼は車で一杯になるから邪魔。滝なら上の方に駐車場がある」と言われた。
 あまりにも失礼な言い方に、友人は「昨夜、宿泊してちょっと滝を見て帰ろうかと思っただけだ。それにしても実に失礼だな」と言うと、「宿泊客なら最初にそう言ってくれ」と言われた。

 とにかくこちらの言うことを最初から聞きもせず、しかもまだ朝の10時。ランチを食べに客が来るにしてもまだ早すぎる。
こちらは滝まで歩いて行けるかどうか、時間はどれくらいなのかを聞いただけで、距離があれば車で行こうと思ったから、かかる時間を聞いただけなのに、最初から人を疑ってかかっている。駐車場の管理人とはいえSの郷の人間。こんな人間を雇っているようでは親会社の明太子屋も底が知れている。今後絶対あそこの明太子は買わない。友人はそう息巻いていた。

 後日、事の顛末を書いてSの郷にメールを送ったとのこと。
すると翌朝、課長を名乗る人物から謝りの電話があり、これからすぐそちらに伺いたいと言って、実際、間もなく手みやげを持ってやってきた。
 一時は非常に息巻いていた友人も、その対応の早さと丁寧さに「クレーム処理はこうでなければ」と感心していた。

 まさに終わりよければすべてよしだ。
ただ、駐車場係(仮にアルバイトかなにかでも)とはいえ企業の中で仕事をしているわけで、上記のような対応をする人間を雇っていることはサービス業にとってはとりわけマイナスだろう。
 従業員教育を疎かにしている証拠で、駐車場係だけの問題ならいいが、他の箇所でもほころびが出てくる可能性はある。
企業は勢いが鈍った瞬間にいままでのツケが回ってきて、一気に失速する例は後を絶たないだけに、日頃から小さな事も見逃さない観察力が必要だろう。
 「戦略的には敵を軽視し、戦術的には敵を重視する」と言われるように事に当たる時には細心の注意が必要。
                                                 (続く)


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