第一施設工業(福岡市)が一般物流向けに「低価格」「ハイスピード」「省スペース」を謳い文句にした「スパイラルリフター」を開発、2013年2月から販売を開始した。
他を持って替えがたいモノを
開発のきっかけは「半導体不況」だと篠原統社長。同社の主力商品はクリーンルーム内で稼働する搬送装置「クリフター」で、海外では「Daiichi」の名前はよく知られているが、半導体の好不況に売り上げが左右されやすい。特にこの1、2年は半導体業界が設備投資を控えたこともあり、同社も「その影響で売り上げが激減した」と嘆く。
こういう時に取る方法は2つ。半導体景気が戻るまで我慢の経営をするか、半導体以外の分野に活路を求め、社内の半導体関連シェアを低くするかだ。
同社が採ったのは後者の方法。「半導体業界にしがみついていくのではなく、国内の一般物流業界に入っていこう」と攻めに転じたのだ。といっても、全く関係がない異分野、新規分野への参入はリスクが大きいし、勝算も見込みにくい。そこで考えたのが同社の得意とする搬送装置の一般物流分野への転用である。
とはいえ、この分野は大小を含めすでに既存メーカーがひしめき合っており、そこで後発メーカーが戦うには価格以外にはない。しかし、同じ土俵で勝負しようとすると、コストダウンを含め業界を知り尽くしている既存企業の方に分がありそうだ。第一、価格でしか差別化できないようでは「他を持って替えがたいものをつくる」という同社の経営理念に反する。
「よし、他社にないものをつくろう」。こうして同社の挑戦が始まった。
経営者には様々なタイプがあるが、篠原氏は間違いなく逆境で発憤するタイプだろう。同社が下請けからメーカーになろうとした時もそうだし、非接触搬送装置を開発した時もそうだった(「下請けの悲哀を脱し、メーカーを目指した男」参照)。そして今回も。
従来、物流分野で使われている昇降機はワイヤーロープかチェーン、油圧で台やカーゴを上下させる方式である。ところが、騒音がしたり、装置を止めて点検する必要があり、メンテナンスに時間と経費がかかるという問題点がある。なにより点検のために機械を停止させなければならないのが問題。もっと作業効率が上がるモノがないか。そんな顧客の要望に応えたのがスパイラルリフターだ。
仕組みは至って簡単。2本の支柱にそれぞれらせん形にパイプが取り付けられてあれ、それが同期しながら回転している。そこに運ばれてきた段ボール箱等が入ると回転しながら上に移動していくというもの。
搬送能力は1時間当たり1,500個。従来型と比べると約3倍の能力アップだ。
搬送スピードの調整ができるので、自社の状況に応じて1時間当たり1,000個、同700個等へ変更することは可能。
価格は1台300〜350万円。サイズはL、M、Sの3タイプ。メンテナンスフリー。
各種展示会に出展
スパイラルリフターの販売先は一般物流業界のほか、食品、薬品、化粧品業界など幅広く考えられそうだ。すでに問い合わせも相次いでいるが、中には同装置を使い搬送物を天井まで持ち上げて次の場所に移動させ、その下に作業スペースを作るという利用の仕方を考えているユーザーもあるなど需要は多そうだ。
販促は各種展示会に出展し、実演するなどの方法で、「一気に市場を攻めたい」と篠原氏は意気込む。孫子に言う「兵は拙速を聞く」である。
国内にとどまらず海外(特にアジア)でも展示会への出展を予定しており、後々は地産地消で現地企業に生産を任せることも考えていると言う。
販売代理店も募集中。
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