最近、岡山に行く度に1、2社ずつ会社を訪問しているが、優れた技術やユニークな技術、特色のある企業によく会う。
泣Xナミ製作所もそんな企業の1つである。
同社の社長、角南勲氏に初めて会ったのは岡山県産業振興財団主催の「交流サロン」で私が講演した時だが、その時、角南社長が持参したコルゲート加工製品と、「注文はすべてインターネットで来ています」という言葉に大いに興味を持ち、翌朝、いきなり電話をして同社を訪問した。
同社はプレス金型の設計・製作会社。創業はいまから35年前。「徹夜続きの毎日で体を壊しそうになった」から、それまで勤めていた会社を辞め、独立。角南氏30歳の時である。以来プレス金型一筋に歩んでいる。
独立時に固定受注先があったわけでも、固定客を持って独立したわけでもなかったが、在職中の腕を見込んで仕事を回してくれる取引先もあり、ゼロからの出発とはいえそれ程困ることはなかったようだ。
その後、少しずつ従業員も増えて、いまは10人体制。逆に「仕事はあるのに人がいない」のが現在の悩みとか。
最近は中小企業にもITの活用が求められ、その一環としてホームページを開設しているところは多い。だが、ホームページ(HP)がビジネスに直結しているかといえば恐らくノーだろう。多くの中小企業がHPは会社案内程度にしかとらえてなく、活用といってもせいぜい問い合わせがある程度ではないだろうか。それでもいまやHPの開設は欠かせず、開設していない企業は社会的に存在していないのと同じである。ただ、HPをビジネスツールという程に役立てているところはまだ少数に違いない。
その点、同社がスゴイのは「ホームページを見て注文が来ている」ことである。もちろん、すべての注文がインターネットで来ているわけではなく、コルゲート加工・製品化の分野に限りということだが、コルゲート関係は「ほぼ100%インターネットから」である。
コルゲートとは「波形」という意味で、蛇腹式のものを思い浮かべてもらうと分かりやすい。この波形(コルゲート)製品が最近、あらゆる分野で急増している。
その背景には以下のようなことが挙げられるだろう。
1.軽量でありながら、強度が高い
2.フレキシブルで施工が容易
3.省スペースで、高い放熱性
これらの要求を満たすものとしてコルゲート製品が大いに注目を集めているのだ。
ただ、最近は波形ピッチがますます狭まる傾向にあり、それだけ高い加工技術が求められている。
同社がコルゲート(波形成形)製品を作るきっかけになったのは某取引先企業からの「こんなものができないか」というひと言だった。
その時見せられたのが歯車形状になった波形成形。
「この程度のものなら簡単にできますよ」
二つ返事で引き受けたものの、いざ取り掛かってみると、そう簡単にはいかなかった。
「最初、プレス加工で簡単にいけると思ったが、実際にできるまでに何か月もかかった」と角南氏は苦笑する。
プレスを上から加えV形状に折り曲げたつもりでも、プレス機を上支点まで持ち上げると元の平板に戻ってしまうのだった。
何度やってもこの繰り返しである。
どうすればうまくいくのか・・・。
それから試行錯誤が続いた。
そのうち、ふとあることに気付いた。
早速試してみると「今度はビックリするようにうまくいった」。
この方法は現在、同社の特許技術になっている。
同社の波形成形は曲げ角度や製品の高さなど「どのような注文にも応じられる」のが特徴。難しいといわれる超鋭角までの折り曲げができるだけでなく、汎用プレス機で全自動加工ができる。
「コルゲートならスナミと言われるように、今後さらに技術を高めていきたい」と角南氏は語る。
(文責・ジャーナリスト栗野 良)
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