私の場合はヤナセBMW福岡かバルコム福岡に車検を出すかで迷っていた。普通なら車を買った所に出すだろう。私は以前の車もヤナセBMW福岡(当時は福岡BMW)から買っているから、迷うことなくヤナセBMW福岡に出していいようなものだが、いくつかの理由で迷っていた。
一つにはバルコム福岡のサービスに接してみたいという気持ち。BMWのディーラーの中でバルコムグループはカスタマーサービス(CS)ナンバー1に2年連続で輝いており、今年もCSナンバー1になることを目指していた。さらにバルコム福岡のオープンレセプションに出席したBMW Japan社長の「福岡でナンバー1ディーラーを目指して下さい」という挨拶(栗野的視点No.413参照)にも興味があり、実態を見てみたいと思っていた。そのためにもバルコム福岡に車検を出してみるのはいい機会ではないかと考えたのだ。
もう一つは、私自身頻繁に中国自動車道を走るし、岡山に滞在することも多い(中国地方はバルコムの営業エリア)ので、バルコムに顧客登録している方が対応がスムーズに行くのではないかと考えたからだ。
とはいえ、ヤナセBMW福岡の諸サービスも魅力的だった。この10数年間のヒューマンサポートがよければ迷いはしなかったのだが。
結局、バルコム福岡に行き車検の見積もりをしてもらうことにしたが、ヤナセBMW福岡からは珍しく車検案内の電話がかかってきた。いままで葉書等で案内が来たことはあるが電話がかかってきたことはないので、やはりバルコムの進出に対し、かなりの危機感を抱いているということだろう。
バルコム福岡での車検見積もりは30-40分待てばできた。以前、同社から説明を受けていた通りに、持ち上げられた車体を下から眺めながら一つ一つ説明を受ける。
客同席で共に下から見上げながら説明を受けるのと、車を入庫して翌日以降に、どこどこの部品交換が必要だから部品代がいくら、トータルでいくらになる、と説明されるのでは客が受ける安心感に随分開きがある。
商品、価格にほとんど差がない場合、差別化を図る手段はヒューマンサービスを含めたソフトサービスしかない。ただ、ソフトサービスはコストサービスに比べ、客に目に見える形でメリットを与えにくい。さらに提供側にすれば余分な時間(コスト)がかかる。影響があるかどうか分からないものにコストはかけられない。そう考えても不思議ではない、またそう考えるところが多いのも事実だろう。だが、バルコム福岡の考え方はそれとは逆だということだ。
車検見積もりに納得し、入庫日時を決めて帰ろうとした時、自分の車がきれいに洗車されていたのには驚いた。車体を軽く拭いてくれるだけでも感謝するが、洗剤洗いをし、ホイールまできれいに洗車してくれると感激する。
「お客さんの車を洗車してお返しするよう社内で提案した時は反対もありました。そんな時間があるのか、と」
お客様に気持ちよくお帰りいただいてこそのCSナンバー1ではないか、ということだろう。
実際、洗車された車を目の前にすると、ほとんどの人がバルコム福岡のファンになるに違いない。
最後にもう1点。同社を後にする時、道路の側まで見送ってくれたが、その後、前の信号で停止したので、バックミラーで見てみると彼らは社内に引き返さずそのまま道路側に立っていた。一体いつまで見送っているつもりかと思い、バックミラーで注視していると、こちらの車が信号を渡るまでずっと見送り、頭を下げていた。
たかがこの程度と思われるかもしれないが、こういうソフトサービス一つ一つの積み重ねが、同社のファンを増やしていくのは間違いないだろう。顧客を失うのは一瞬だが、ファンづくりには日々の真面目な積み重ねしかない。業績は必ず後から付いてくる。
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