再びカルロス・ゴーン問題が及ぼす影響について書いてみたい。
逮捕直後は擁護する意見も結構見聞きされたが、次々に負の情報が出てくると各方面の論調もかなり変わってきている。とはいえ、ほとんどがゴーン氏に直接関係することで、その周辺への影響についての論評が少ないのが少し残念に思う。
日本でも広がっている高額報酬の汚染
それでも今回の件で、もしかすると多少潮目が変わるかと思わせる動きも出てきた。まず現れたのが高額報酬への対応だ。経済産業省所管の官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)の1億円を超える役員報酬に対し、「国民の理解を得られない」と経産省が待ったをかけたのだ。正確には経産省が待ったをかけたのは11月上旬だからゴーン氏が逮捕される前で、今回の件を受けての対応かどうかは定かではない。
ただゴーン氏逮捕という現実を目にした今から見れば、経産省の判断は国民感情に近いものだったと評価したい。とはいえ元々の報酬案は経産省の側から提示したようだから、その辺りを突かれると彼らも何とも弁明のしようがないかも分からないが、高額報酬に待ったをかけたという行為は評価していいだろう。
腑に落ちないのは高額報酬の申請に対し不許可とした経産省の態度に怒り田中正明産業革新投資機構社長が一方的に会議の席を立ったことだ。
産業革新投資機構というのは民間企業ではない。ファンドはファンドでも国の資金を元手にしているわけで、民間ファンドのように自ら資金を集めて投資するのとはそもそもスタートラインが違う。早い話、リスクがない。
「他人(国民の税金)の褌で相撲を取る」わけだから、失敗しても彼らが痛みを伴うことはない。ノーリスク・ハイリターンという、いまどきこんなうまい話はないだろう。仮に100歩譲って(譲りたくはないが)「優秀な人材を集めるためには高額な報酬が必要」だと言うなら、投資先の育成に失敗しリターンが得られなかった場合、彼らがリスク補填をするとでも言うなら分かるが、そのつもりはないようだから、どこまでも甘えている。
こうした風潮を創った、少なくとも拍車をかけたのがゴーン氏なのは間違いない。その意味で彼の罪は重い。
もう一つ腑に落ちないのは12月3日、報道陣の取材に対し、JICの田中社長が次のように述べていることだ。
「我々は報酬を提示されて就任を決めたのではなく、日本の将来の産業を育成するという志に共鳴したからだ」
カネが目的ではない、と言っているように聞こえるが、よく政治家が弁明する場合に使う「誤解を与えたとすれば真意ではない」と言うのだろうか。真意は「志もないことはないが、本心は高額報酬に引かれたからだ」と。
大体、国のカネであれ県のカネ(税金)であれ、身銭を切らずに他人の褌をあてにしたファンドで成功した事例は極めて少ない。
現在、JIC経営陣、経産省ともに一歩も引かない姿勢で対決しているが、一部にはJIC解散説も出ているとか。この際、金の亡者を一掃するかJICを解散したらどうか。
(2)に続く
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