「グローバル」トリックに弱い日本人
日本はアメリカに弱い。この体質をゴーン氏は熟知していたようだ。さらに「グローバル」という言葉に弱いことも。だから彼はあらゆるところでこの2つを組み合わせてよく使っている。
「日産はグローバル企業だ」「報酬も国際基準で判断すべきだ」
彼が言いたいのは、日産=グローバル企業=国際基準の報酬=ゴーンはグローバル企業のトップだから高い報酬を貰う、という図式である。
日本人が弱い、この「魔法の言葉」をさらに強くしたのが「V字回復」という過去の業績だ。だが、冷静に考えれば、ここにトリックがあることに気づくはず。
まず、「グローバル企業」とはどのような企業のことなのか。なにを持って日産を「グローバル企業」と言うのか。海外展開しているからなのか、海外に製造拠点があるからなのか。社内語が米語だからか。
要は「グローバル企業」の内容が明確に提示されていないのに「グローバル企業」という言葉だけが独り歩きしているわけだ。
「国際基準」という言葉にも同じことが言える。「国際基準」の中身を明確にしないまま、「国際」という言葉で人々が抱くイメージをうまく利用しているのだ。
実は彼が言う「国際基準」の「国際」とはアメリカのことであり、EUやアジア圏その他は入っていない。
つまり自分の高額報酬を特別なものではないと思わせるためにアメリカ企業トップの報酬を引き合いに出しているだけなのだが、「グローバル」等のカタカナ語に弱い日本人は彼の言葉のトリックにいともたやすく騙され、「ゴーン信者」さえ生んできた。
ゴーンマジックを信奉した人々
それにしてもなぜ日産(だけではないが)はゴーントリックに騙され、ゴーンマジックを見破れず、ここまで来てしまったのか。
マジックや占いの類で重要なのは最初である。目の前に座った相手の性格、癖などをまず言い当てる。その瞬間、相手は精神コントロール状態になり、以後の言葉を疑わなくなり、自分に都合よく解釈しだす。
実はこの話、当たると有名だった姓名判断師に直接聞いたことがある。まず病気や過去の怪我について言い当てるのだ。「あなたは内臓に問題がありますね」「盲腸の手術をしているでしょう」「右足に怪我をしたことがありますね」と。
これで相手が信用してしまう。「当たった」と。そうなれば後は簡単。「当たるも八卦、当たらぬも八卦」で、曖昧な表現の言葉でも、当たる方にどんどん解釈していく。自分で信じて行くわけだ。仕上げに「空中浮遊」の写真でも見せれば、もう完全にマインドコントロール状態で疑うということをしなくなる。
先の姓名判断師に会ったのは30年以上前のことだが、その「先生」がトリックを教えてくれた。相手の健康状態は顔色を見れば分かる。顔色がよく、若い女性なら恋愛問題の悩みと推測がつく。盲腸や怪我は、と問うと、昔は虫垂炎になる人が多く、盲腸の手術をしている人が多い。だから大抵は当たる。私自身、子供の頃に盲腸の手術をしていたから、この話には大いに納得した。
では、足の怪我は。昔は今と違って子供は外でよく遊んでいたから怪我の一つや二つはする。大きな怪我でなくても釘の踏み抜きぐらいはまずしている。右利きの人間は右足に怪我をする確率が高いから「右足」と具体的に指摘する。皆思い当たる節があるから「そう言えば」となる。もし怪我が左足だった場合は「左利きだろう」という。違った場合でも「姓名判断でそう出ているから、今後怪我をする可能性があるから十分気を付けるように」と言えば、大概の人は納得する。
そう、過去を見通して当てたわけではなく、確率論で「当てた」だけだが、占いの類にすがろうという人はなんらかの迷いや悩みを持っているから、いとも簡単にマジックの世界に落ち込んでいく。
(3)に続く
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