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即自的自然を対自的自然に(後)
〜 地方活性化の視点(1)


彼岸花を群生させ名所に

 近年、その存在が注目され、集客に一役買っている花がある。秋、農村部に行けばあちこちで見かける彼岸花だ。真っ赤な花が特徴だが、数は少ないながらも白色や黄色の花もある。棚田と彼岸花の取り合わせがいいことから、彼岸花の開花時期に合わせて棚田祭りを行っている地域もある。田の畦でも、土手でも、少し日陰で水気がある所なら、どこでも咲いている。
 ところが、いざ群生地となると日本全国、数が非常に少ない。中国地方以西では、私の知る限り、岡山県真庭市に1箇所、広島県三次市に1箇所ぐらいで、九州地区では知らない。

 九州は棚田に咲く彼岸花が有名で、それはそれで美しい風景だが、群生ではない。あくまで主役は棚田で、彼岸花は畦に生えている、いわばバイプレーヤーだ。
 棚田の彼岸花はひっそりと、あるいは静かに見るもので、観光目的の集客という意味では少し難がある。山間(やまあい)の細い農道しかないから車の離合もできない。それでもシーズンには彼岸花のある風景を見に多くの人達が訪れる。
 福岡県八女市の棚田で出合った中高年夫婦は棚田と彼岸花の写真を撮るためにわざわざ岡山県浅口市からやってきていた。最近このような中高年が増えている。彼らこそが今後の観光のメーン客になる。

 彼岸花の写真は「栗野的風景」に数多く載せており、岡山県の群生地の写真も10月3日に「群生する彼岸花」と題して載せている。それを見てもらえば群生の様子が分かり、彼岸花見物に人が集まるのが理解できるはず。

 彼岸花で地域おこしを試みている自治体もある。福岡県宮若市は彼岸花を市花と定めていることもあり、今年、市役所前を流れる犬鳴川の土手に地域のボランティア達が彼岸花を植えた。(「栗野的風景」9月27日に写真をアップ)
 私が見に行った時は満開の数日前だったが、来年、再来年ともっと数が増え、密集してくれば九州最大の群生地になるのは間違いない。
 重要なのは「群生」させること、森を作ることだ。その辺りの土手や田んぼの畦に咲いている即自的な存在の彼岸花を、群生させ、対自的な存在に変えればいいのだ。

 日本人はモノマネが得意。ある方法が成功したと聞けば右へならえで、すぐ同じものをつくる。するとあっという間に日本全国同じようなイベントだらけになる。ひな祭り、ひまわり、コスモスetc。地域性など無視して、とにかく数集めて飾ればいいという具合で雛を飾るものだから、もうどこに行っても同じようなものばかりで、目新しさも感動もなくなってくる。モノマネが悪いとは言わないが、もう少し独自性、コンセプトを打ち出して欲しいものだ。
 つい先日、大分県日田市天瀬で偶然「彼岸花とかかし祭り」に出合った。すでに彼岸花の方は時期が過ぎていたが、これがなかなか面白かった。ソーラー充電式自動点灯ライトを彼岸花とかかしの足元に埋め込んでおり、その数もかなりだったので、費用もかなりかかっていそうだが、これは地方の財産を上手に生かしたやり方である。

 しかし、これらのいずれもが、ここで終わっている。製造業で言えば、物を作って満足している段階、見に来た友人、知人、隣近所の人に「あ〜、いいね」と言われ、それで満足しているのと同じだ。
 これでは地方の活性化にならない。作ったものは売れてなんぼと同じように、交流人口の増加を地域の活性化に結び付けなければならない。その場所を見学しただけで帰してはいけないのだ。
 皆まで語らないが、点を線にし、面的な動きにまで持っていく必要がある。回遊性と人の動線をいかに作っていくか、流れではなく淀みをいかに作るかを考えて欲しい。

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