Google

 


民主党トップ3人の罪を問う!


功名心に焦る菅首相

 前稿(No.378「国難時にトップ交代は是か非か」)で国難時のトップ交代は1歩後退のように見られるが、実は2歩前進になると書いた。
 ただ、その場合の前提はトップ交代が迅速に行われることである。ここでグズグズして時間を浪費するようでは、それはマイナスにしかならない。本来、政局にするのが目的でなくても、グズグズすれば結局、国民不在の政局目的と取られてしまうし、またそうなる。よもやこの国難時にそんなことを考える政治家はいないだろうと思っていたが、私の見通しは少し甘かったかもしれない。

 まず、菅首相がこんなにも権力に執着するとは思わなかった。かつての仲間が菅氏を評して「一度手にしたものは絶対手放さない人」と語っていたが、彼の言動を見ていると、なるほどと納得してしまう。菅氏が見つめているのは首相の椅子で、この国のことではなさそうだ。

 それにしてもなぜ、彼はかくも首相の椅子に執着するのか。あるいは首相でいることにこだわるのか。
 1つには内閣不信任案決議の否決がある。
不信任案が否決されたということは「私に『メドが付くまでしっかりやれ』と議決をいただいた」ということであり、一定のメドがつくまで辞められない、と妙な使命感に燃えている。
 使命感に燃えるならもっと前だろうと思うが、どうも民主党のトップは鳩山前首相もそうだが、退陣直前になって吹っ切れるのかどうか、使命感に燃えるようだ。

 2つ目は功名心。
菅首相の好敵手は野党の党首でも党内の人間でもなく伸子夫人のようで、彼女から「あなたが首相になって何が変わったの? 辞めるにしてもなにか実績を残してから辞めなさいよ」と言われたのかどうかは知らないが、首相在任中に歴史に名を残す「何か」をやりたいという思いが強いようだ。
 もちろん首相になった人間は誰であれそう思うに違いないが、とりわけ彼の場合はその思いが強いように感じる。
 先の参院選中に突然言い出した消費税値上げや、浜岡原発の突然の停止「要請」、自民党谷垣総裁に電話で突然持ちかけた大連立話などにその表れを見ることができる。

 これらに共通しているのは「突然」の行動であり、そうした行動に走らせた原動力は「名宰相(?)」として後世に名を残したいからだろう。
 ただ、菅氏の場合はこれをやりたいという明確なものがあるわけではなく「何かをやりたい」という漠然とした気持ちだけなのだ。明確な目的がないから時間とともにやりたい内容が変わってくる。ということは、一つやってもその次にまたやりたいことが出てくるわけで、その都度「本当にやりたいことはこれなのだ」と言い続ける。すでにその片鱗はこの10日ばかりの間にも出ているが。

 こういう思いに駆られた人間は決して自分から身を引かないだけにやっかいだ。周囲からの声はもう彼の耳に届かないに違いない。いや、周囲の声に耳を貸そうなどとはこれっぽっちも思っていないだろう。「例え支持率が1%になっても辞めない」と言ったとか言わないということがかつて取り沙汰されたが、つい、そのことを思い出してしまった。

 菅氏が首相の椅子に執着すればするほど被災地は復興どころか復旧さえ遅れていく。復旧復興が遅れれば3次被害が増えてくる。つい先日、酪農家の自殺が報じられたが、こういう3次被害の拡大は是が非でも防がなければならない。

抜けない「伝家の宝刀」

 菅首相を「ペテン師」呼ばわりしたのは前首相の鳩山氏だが、よく言ったと拍手した。上流階級出の鳩山氏が「ペテン師」などという言葉を使ったのだからよほどのことだったのだろう。
 ただ拍手したのはここまでで、そもそも菅首相の居座りを招いた張本人の一人は鳩山氏だ。そして、もう一人は小沢一郎元代表である。
 結局この2人が煮え切らなかったものだから、政局になり、ムダな時間を費やしている。

                                                    (続く)


(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 栗野的視点INDEXに戻る