中小企業は概してPR下手−−。
ところが、いろいろ聞いていくと結構特徴があり、いい技術を持っている所も多い。
しかし、会社パンフレットやホームページその他を見ても、自社の特徴を分かりやすく紹介しているところが少ない。
あれもできます、これもできますと欲張るものだから、内容が総花的になり、結局どこにでもある、特徴がない企業になっていたり、いくつかの製品と所有している加工機械の紹介(ハードの紹介)で終わっているところがほとんどだ。
こうした傾向は関係先がほぼ固定しているところほど目立つ。
しかし、昨今は大手企業同士がある日突然、合併、売却をする時代。
いままで定期的に来ていた仕事が突然ストップした、という話は多い。
それから慌ててPR、広報の必要性を意識し、看板を新たに作ったり目立つようにしてもすぐに効果があるわけではない。危機意識を持って行動したのはその時だけで、気が付いたら以前と何も変わっていなかったということになる。
では、大手企業のように膨大な広告宣伝費をかけないと売り上げは伸びないのか、といえば必ずしもそうではない。
知恵さえ絞れば、少ない経費で効率的に自社のPRを行うことが出来る。
今回はその実例を2つ紹介したい。
たかが名刺、されど名刺
「治具&機械のプロフェッショナル」
(株)長山鉄工所(岡山県倉敷市)・長山貴昭社長の名刺にはそう書かれていた。
社名の前に書かれていた、いわば会社のキャッチフレーズである。
社名の前に「○○の設計・加工・製作」などといった業務内容を書く所は多い。
ところが同社の場合、業務内容ではなくキャッチフレーズ。それもイメージ的なキャッチフレーズではなく、会社(仕事)の特徴を打ち出したキャッチフレーズにしている点がウマイ。
一言でキャッチフレーズといっても、作るのは案外難しい。
まず、一言で表現しなければならない。
文字数が多すぎると覚えてもらえない。かといって、短すぎると意味が伝わらなくなる恐れがある。
一番大事なのは、自社の特徴をきちんと表現できているかどうかだ。
「○○鉄工所」という社名が与えるイメージは革新性、斬新さ、近代的、精密加工、微細加工とは程遠い。いわばどこにでもありそうな会社をイメージさせやすい。
それを「治具&機械のプロフェッショナル」というフレーズを付け加えることで、初めて名刺交換した相手にそれとなく事業内容と仕事のレベルを伝えることに成功している。
「当社はなんでもできます」ではなく、「治具&機械」に関しては「プロフェッショナル」なのだ、プロの仕事をするのだ、と特徴を明確に打ち出している。
中小企業の場合、出来るだけ広範囲に仕事をもらいたいから「なんでもできます」というところが多い。しかし、「なんでもできる」というのは、なんでも「そこそこできる」ということであり、「なんにもできない」というのと同意語になってしまう。
それよりは「△△はお任せ下さい」と言った方が、仕事を頼む方も「あっ、その分野が得意なのだ」と分かるから、仕事の発注もしやすい。
もちろん、キャッチフレーズはお題目ではない。
キャッチフレーズは社員の意識統一に役立つし、外部からそういう目で「見られているという自覚」も社内に育つ。
その代わり、内実が伴わなかった時のダメージははるかに大きい。
その覚悟をし、キャッチフレーズに恥じない仕事をしていくことが重要だ。
普段何気なく名刺を交換している人も多いだろう。
しかし、一度考えてみて欲しい。わずか5.5×9cmの小さな紙だが、初めて会った人には必ず渡しているはずだ。会社のパンフレットは配らなくても、名刺は渡しているし、相手の手元に残る。
それを片面しか使わなかったり、社名だけの表示で終わらせるのはもったいないではないか。
ビジネスは第一印象、最初の3分で勝負が決まる、とよく言われる。
それなら最初に相手に印象づける小さな紙片に、会社の「PR大使」を任命してみたらどうだろう。
(2)に続く
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