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視点を変えてマーケットを見れば(3)
概念化に失敗すると売れない


差別化をどこでするか

 既存市場への参入でキーになるのは他社製品との差別化だ。ただ、ひと口に差別化と言っても、これが案外難しい。例えば価格でするのか、それとも商品力か。
 大半の企業が「商品力」と答えるに違いない。なるほど、価格競争に巻き込まれ薄利での戦いを余儀なくされるより、商品の違いを理解して購入してもらう方が適正利幅を確保できる。またリピートに繋がる。
 だが果たしてそうか。ちょっと立ち止まって自社商品を振り返ってみよう。言うほど商品力はあるだろうか。

 こういう話がよくある。「当社は〇〇の分野ではトップです」。それは素晴らしいと感じ、よくよく聞いてみると非常に狭いジャンルの、これまたちょっとした機能だったりし、それはほとんど自己満足の世界ではないのかと思うこともしばしばだ。
 例えばスーパーマーケットと総合スーパー、ディスカウントストア、スーパーセンターの違いが分かるだろうか。あるいはその違いを認識して買い物先を選んでいる消費者がどれくらいいるだろうか。
 恐らく消費者はそれらを差と感じてないだろう。感じているのは価格だったり、商品構成(△△商品があの店にはあるとかないとか)だったりの方だ。とすれば、「当社は世界初のスーパー」というような謳い文句は有効な差別化の武器にはならないということである。それにしても、こういう狭いジャンルでの「トップ」「初」「特許」みたいな話が結構ある。
 それは機能、性能差でも同じことだろう。仮に搬送装置の速度を従来品の倍にした製品はどうか。これは十分な商品力があり、競争力もあるだろう。では1.2倍、1.5倍ならどうか。1.2倍では難しいが、1.5倍ならなんとかいけるかも。
 大きさ軽さも同じだ。小さいことは正義だとまでは言わないが、モノは軽く、コンパクトな方がいい。かといって従来品の95%、90%では差別化にはならない。せめて50%、最低でも65%だろう。

概念化に失敗すると売れない

 概念化が重要とは既述したが、それをうまく利用して既存市場で売り上げを伸ばした企業がある。九州に本社を置く通販会社「ジャパネットたかた」だ。恐らく知らない人はないと思うが、同社の名物社長(現在は退任。創業者)高田明氏が甲高い声で商品説明をし「安いでしょ」というTV通販はご存じだろう。
 同社が通販を始めた電波媒体はラジオが最初だった。その頃、カーラジオで聞きながら「うまいな」と感心したものだ。「うまい」と感じたのは喋りではなく(ラジオショッピングは社員が喋っていた)商品選定がだ。

 全国知名度が劣る会社が通販を行う場合、訴求ポイントは価格というのが一般的だ。1流メーカー品に比べ、安心感、耐久性、機能性は劣るかもしれないが、価格は圧倒的に安い商品を通販に乗せている。いわゆる通販専用商品を売るわけだが、ジャパネットたかたの場合は違っていた。誰もが知っている有名メーカー、東芝だとかパナソニック、富士通、シャープといった1流メーカー品を扱っていたのだ。
 消費者にとってはラジオショッピングはTVと違って商品を見て確認することができないからリスクがある。ところが有名メーカーの、誰もがよく知っている商品の場合、耳だけでもその商品を思い浮かべる、想像することができる。だから安心して買えるわけだ。

 なぜ、商品名を聞いただけで、その商品を思い浮かべることができるのか。それは消費者の中にその商品に対する概念が出来上がっているからである。例えば全自動洗濯機と聞いて2槽式洗濯機を、液晶テレビと聞いて昔の分厚いブラウン管TVを思い浮かべる人はいないだろう。すでに人々の中に全自動洗濯機とは、液晶TVとはこんな形、機能を持ったものという概念が出来上がっているからだ。
 これは既存商品だからできるもので、コンセプトもデザインも画期的な新商品の場合にはまだ概念が創られていないから、消費者もイメージすることができない。
 イメージできないものはなかなか売れない。新ジャンル商品が売れるようになるまでに時間がかかるのは、こうした理由からだ。
                                               (4)に続く

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