福岡の車市場が熱くなってきた。
といってもハイブリッドや軽自動車市場のことではない。輸入車市場、それもBMWで競争が激化しそうだ。
福岡県内3ディーラー体制に
BMWと聞けば近年ブランド力を強化していることでも知られているが、それでもフォルクスワーゲン(VW)に比べるとまだまだ遅れている。例えばVWは各県ディーラーにVolkswagen○○(ここに各県、地名が入る)という名称を付けるよう統一しているが、BMWの場合はまだそこまで徹底されていない。VW流でいけば福岡や岡山のディーラーはFukuoka BMW、Okayama BMWとなるべきだろうが、現実にはYanase BMW、Balcom BMWという名称だ。
Fukuoka BMWという名称がなかったわけではない。5年前までは存在していた。長年、福岡のBMWディーラーだった富士モータースが使っていた。ところが、同社がヤナセバイエルンモーターズ(以下ヤナセ)に身売りした(*)ことで、この名称は使われなくなった。ヤナセはFukuoka BMWという名称をそのまま使用するよりヤナセブランドの方がブランド力があると考えた、あるいはヤナセブランドを使用することにこだわったのだろう、Yanase BMWという名称を使っている。Fukuoka BMW(富士モータース)の組織をそのまま引き継いだにもかかわらず。
*「栗野的視点(No.210):なぜ福岡BMW(富士モータース)はヤナセに全株式を売却したのか」を参照頂きたい。
販売店(ディーラー)の名称統一は企業にとって重要な意味を持つ。統一ブランドは全国一律のサービスを顧客に提供する保証であり、メーカー、総代理店の販売店への支配力強化の元だからだ。要はBMW Japanとディーラーであるヤナセやバルコムモータース(以下バルコム)との間に圧倒的な力関係の差がない、もっといえばディーラーの力の方が強いということだろう。
さて冒頭の話である。現在、福岡県内のBMWディーラーはYanase BMWとKitakyushu BMW(ウイルプラスモトーレン)の2社があり、前者は福岡・久留米地区を、後者が北九州地区を営業エリアとしている。そこに4月下旬からもう1社増えることになったのだ。
新規参入するのはバルコムモータース(本社・広島市)。Balcom BMWの名称で広島、山口、岡山の3県で営業展開をしている。
当初、この情報に接した時、担当エリアの問題が気になった。というのは、前述したように福岡県内にはすでにディーラーは2社あり、それぞれ福岡地区と北九州地区を営業エリアにしているからだ。
福岡市と北九州市はともに政令指定都市であり、両地区は同程度の規模のように見えるが、人口も商業集積も福岡市の方が上回っている。端的に言えば、福岡地区の方がおいしい市場であり、進出するなら福岡市場だろう。また新規参入する側から言えば、停滞市場より拡大市場への参入でなければ旨みはない。
しかし、距離的、人的な連続性も重要で、人の流れ、経済的な結び付きを無視した不連続出店をしたばかりに苦戦した企業は過去多い。
それを考えれば中国地方からの進出は北九州エリアというのが順当だろう。だが、同地区に2ディーラー体制で挑む程のマーケットがあるかといえばノーだ。
となると、現在、Yanase BMWが営業エリアとしている範囲に参入するしかない。それとも福岡市とその周辺都市を含む福岡都市圏部と県南地区に2分してエリアを分けるかだ。
その場合、ヤナセは福岡都市圏部市場を手放さないだろう。では、一方のバルコムが県南エリアで満足するかといえば、これもノーだろう。バルコムはすでに中国3県をエリアにしているので、なにもそこまでして大して旨みがない市場に出る必要がない。
結局、BMW Japanが出した答えは現在ヤナセがエリアとしている福岡市場への参入を認め、競合させることだった。
かくして4月27日、バルコムはヤフードーム(福岡市中央区地行浜)近くにBalcom BMW福岡をオープンする。店舗は2階建てで、延べ約1100平方メートル。1階は整備工場で、2階がショールーム。売上見込みは年間約8億1500万円とのこと。
(2)に続く
|